H29後:保育の心理学⑪

平成29年度後期試験 保育の心理学 問 11
 次の【事例】を読んで、【設問】に答えなさい。

【事例】
4歳児クラスに進級した頃のT君(男児)は思いどおりにならないと、噛んだり、物を投げたり、ひっくり返って泣き続けたりして、仲間とうまく関わることができなかった。
また、活動中に保育室から出てしまうことがしばしばみられた。以下は、T君の6月以降の様子である。
6月:朝の集まりのとき、それぞれが「好きなもの」を発表しあうなかで、U君(男児)が「ボク、T君が好きー」と言った。クラス全員の前で「好き」と言われ、落ち着きなく座っていたT君は慌てて座り直し、姿勢を正して、嬉しそうにしていた。
7月:クラスで乱暴なことをしてしまった時に、そのことを友達に言われても、以前のような激しい行動や大きな混乱は少なくなってきた。
9月:おままごとの最中に、T君は誤ってGちゃん(女児)の袖口に水をかけてしまった。”しまった” というT君の表情に対して、Gちゃんは「いいよ、いいよ、すぐに乾くから」と言った。その言葉にT君は、ほっとしたような表情をみせた。そして気持ちが混乱することなく、おままごとが続いていった。
12 月:ゲームで自分の思いどおりにならないと、今までは泣いて保育室から飛び出してしまっていたが、初めて保育室の入口のところで座り込んでみんなの様子を見ていた。ゲームが終わったあと、保育士がT君のところに行き、「ゲーム、楽しかったよ。
でもT君がいたほうが、もっともっと楽しかったのにな!」と伝えた。
2月:発表会で『桃太郎』をすることになったが、鬼役のなり手がいなかった。T君は自分から「やる」と鬼役をかってでて、クラスの皆から「ありがとう」と言われた。
この頃から、遊びの輪から飛び出していっても、保育士が誘うと自分で気持ちを切り換えて参加してくるようになった。

【設問】
次の文のうち、適切な記述を○、不適切な記述を × とした場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。

  1. 思いもよらない友だちの言葉が、T君自身の自己の理解により好ましい影響を与えた
    と考えられる。 →
  2. 集団の一員としてルールを守って友だちと楽しく遊べるようにと、保育士がT君に言い聞かせたという働きかけが役立ったと考えられる。 →×
  3. 皆から感謝される喜びを通して、自己概念が肯定的なものとなり、さらに情動を制御できるようになっていったと考えられる。 →
  4. T君は他者による評価を自分自身の基準として取り入れ、行動が変化していった。またその結果、仲間からの見方も変わり、さらにT君の自己概念も変化していったと考えられる。 →

正答:2 ○ × ○ ○